『煮解賭 ( にげと ) 』

明朝末期、中國北東部の男達の間で、素麗建(すれたて)なる遊びが流行っていた。
先端に旗をくくりつけた棒を地面に立て、合図と共に棒に駆け寄り旗を奪い合
うという、己の機敏さを誇示する遊びであった。
やがてこの遊びに飽きた者達が、毒草を煮込んだ煮汁を飲み、その解毒剤を旗代
わりにして奪い合うという遊びに発展させた。
命を落とす者が続出したが、戦いに勝利したものは英雄として賞賛され、朝廷に
仕える者を輩出するほどであった。
この毒草の煮汁の解毒剤を賭けた闘いは「煮解賭」と呼ばれ、時代を左右する勝
負の場でも競われてきた。
己の肉体を誇示する機会の少なくなった現代社会においては、インターネットで
の「2ゲット」と形を変えて、現代人が機敏さを争っているのである。

民明書房刊「できる!これであなたもイソターネット」より




『惨解賭(さんげと)』

『煮解賭 ( にげと ) 』に失敗した者のこと、運良く生き延びたものの生涯にわたってその恥を晒し。
恥を忍ばねばならない。

民明書房刊「できる!これであなたもイソターネット」より




愚難民恣意(おろなみんしい)

三国時代、魏の国に、残忍で知られる厳溌・厳剌(げんはつ・げんらつ)という兄弟の将軍がいた。
彼らは国境の守備に就いていたが、ある時戦乱によって自国に流れてきた多量の難民が起こした暴動に対して、
兵を出して皆殺しにして鎮圧した。
かろうじて生き残った難民は鬼のような厳兄弟を憎み、また恐れ、「厳鬼溌剌(げんきはつらつ)!」と叫んで抗議の声を上げた。
それに対して厳兄弟は「愚難民恣意(愚かな難民は恣意的であり、勝手気ままに動くから手に負えない)」と、うそぶき取り合わなかった。
この後、厳兄弟は悪と不幸の主であるとして「悪不幸主(おふこうす)」と呼ばれたという。

現在でも、「げんきはつらつ!」という掛け声に対して「おふこうす!」「おろなみんしい」などという言葉を返すCMがあるが、
それはこの故事の名残である。

(民明書房刊「大村昆はどこへいった」より)




orz (オレゴンヒップホップ)

1990年代、アメリカのオレゴン州で始まった音楽のジャンルと
その文化的ムーブメントの事をミクスチャーした音楽として始まり、
音楽演奏と共に牛の糞を投げる。
テクノミュージックとカントリーミュージックパフォーマンスで有名になった。

「オレゴンテクノ」」と呼ばれたが、これを
アメリカのオレゴン州(Oregon)の略称ORからとって、
ORtechあるいはORsと自称するようになった。

その後、オレゴンテクノに影響を受けたラッパーたちが、
オレゴンテクノをヒップホップに取り入れたものがオレゴンヒップホップである。
ORsの「s」をヒップホップ風の「z」に置き換えて
「ORz」あるいは「orz」と自称する。

なおインターネット内でも「orz」が使われていることがあるが、
これは言葉の意味だけでなく、当時のライブで牛の糞を投げられた観客の多くが、その臭気の余り「orz」のような形をとって会場内で嘔吐いていたことに由来する。
牛の糞を投げられる機会の少なくなった現代社会においては、「orz」を落胆している様子に見立てて表すようになったのである。

(民明書房刊 『音楽と現代文化』より抜粋)