12月15日神奈川県厚木市 富野監督握手会のレポートhr size="8" color="red">
<まずバンダイビジュアルの人が挨拶。
 2、3分の間があった後、監督登場。(---となっているのはスタッフや質問者。)>
---「はい、えー、早速です。オーバーマンキングゲイナーの富野由悠季監督です。拍手でお迎え下さい。」---
<拍手の中、いつも通り自身も拍手をしながら壇上へ。>
---「監督、折角なんで、何か挨拶をお願いします。」---
「えー、こんにちは、おはようございます。と、言うのですか。(笑)
 という事だけでは困る、困ると司会担当の方から言われたんですけどもね。(笑)
 でもこうやって皆さんのお顔を・・・、こういう場所で拝見させていただいてとても嬉しく思ってます。
 で、それには多少の理由がありまして、厚木という所は、とにかく僕は大っ嫌いな所なんですよ。(笑)
 でね、どういう風に大嫌いかっていうと、大学4年間、小田原からとにかく東京まで小田原線で通った人間ですから。
 で、厚木という地点を小田原から行った時には厚木を越えて東京、
 で、東京から新宿から帰って来る時には厚木を越えて、やだよと思いながらまだ小田原まで当分時間があるっていう意味で。
 あの、そういう4年間を本当にほとんど・・・、あ、ほとんども嘘だけれども、とにかく通っていた所ですので、
 ん、基本的に僕にとっては通学路だったんですよ。
 で、まさか、それこそ40年前の記憶で言えば、あの、こういうような所で、こういうような所に降りる事は
 絶対にないと思っていたのが、降りられる様になってしまったという意味では、
 あーあ、結局、その、ん、僕流の言い方になっちゃいますけども、生まれ故郷とか、故郷とか、
 ふるさとに惹(ひ)かれる事というふうに、ひょっとして縛られているのかもしれないな、っていうのが僕の考えなの。
 だけど、こうやって僕よりずっと若い皆さんの顔見てると、ああ、時代は変わってゆくからいいんじゃないか。
 全く知らない土地でもない、こういうような所で皆さん方とお会いできるのは嬉しいし、何よりも僕にとっては、あの、
 一つ言えるのは、これは皆さん方のご両親、皆さん方のご両親はまだ僕の年になっていないご両親の方が多いと思うんです。
 えーと、僕はもう今年61ですから。(含み笑い)
 で、ような立場から見たときに、ああ、自分の知っている土地にもこういう若い方がいらしてくれて、
 こういう方たちが、またここで暮らしていくんだなっていうような順番を、こうやってきちっと見せてもらえるって言うのは
 これはホント・・・、あ、これから言う事ちょっとオフレコね。他の土地の人達には。(笑)」
 監督は冗談半分で言っていると思えるのですが、一応この部分は割愛させていただきます。
 今、ここに立っている事が恥ずかしいという事と、何故恥ずかしいのかということについて述べています。
「本当にね、今こうしているのが、かなり、辛いんじゃなくて、恥ずかしい。(笑)
 あんなポスターの写真撮らせているんだから、どうってことないじゃんおじさん、おじいさんっていう言い方があるんだけれども、
 それも誤解です。あのポスターの写真何って言うと、本当に、一秒半ぐらいやった表情を
 その時の女性のカメラマンだったんだけれども、本当に上手だったんです。
 あのー、あるインタビューの取材をしていて、その時に、いわゆるインタビュー用の写真を撮るという事をやったんだけれども、
 それが全部終わった後で、終わった後で、言ってみればその女性のカメラマンと気分が、あー、よく、何て言うのかな
 その瞬間いられた時に、ちょっと言っちゃえばふざけてた。
 それで、そうなの、言っちゃえば、カメラ・・・、そう、4、5年かなやってて、じゃあこれからうまくいくのよね!
 みたいな話をしてる時に、バシャッて撮られた写真で、私はいつもああいう顔をしてません。(笑)
 で、ん、そういう、だけどこういうものがあったら、富野はこうだろうって思われますけども、
 思われる部分は当然出てくるんだけれども、今言ったとおりで、本当にかなり辛い。辛いって言うより恥ずかしい。
 で、大体そういうことで言えば、冷静に考えていただきたいのは、今ここにバンダイビジュアルのメーカーの方がいるから
 本当は言っちゃいけないんだけれども、大体こんな所に、こんな時間に、大体来るあんたたちもおかしいのよね。(笑)
 ん、そういう意味ではお互い恥ずかしいから、恥ずかしいまんまで握手会をしましょうって、そういう企画なんですって。
 だけれども、だけども、ここから(壇上から)握手するのってすごく生意気で嫌じゃん。
 それで下に、足場をおんなじにさせてもらいます。
 ので、それでいいですよね。(スタッフの方に向いて)という事で、このあとどうする。(笑)
 あ、だけど、あ、それで、準備があるならしてください。はい、してください。
 そして、こういう時でないとお話できない部分もあると思いますんで、これもこの人達(スタッフ)が予定していなかった事です。
 何か質問があったら聞く。どうぞ、受ける。
 で、この距離で顔がきちんと見えるんだから、見えるんだから、本当に何かあったら、ま、多少の時間は、
 そんなにあるとは思えないんだけれども、(笑)あるとは思えないんだけれども、はい、どうぞ。」
---「ガイア・ギアの小説は再販されないんですか。」(笑)---
「えー、そういう話は、あの、あー、そういう話は、でも大体僕ガイア・ギア覚えていないから知らない。(笑)
 次、次、はい。」
---「キングゲイナーは、ご自分の中ではどんな感じの作品なんですかね。成功したかどうかっていう・・・。」---
「ああ、そんなのはまだ、今だってまだ最後の方作っているわけで、あ、いや、作りつつありまして、
 大体、一巻目のDVDを買ったからといって、最後までちゃんと出来るかどうか分かんないんだから、
 本当は今日買わない方がいい!って言っちゃうぐらい。(バンダイビジュアルの人の方を向いて)今、聞いていないからね。」(笑)
---「聞いてます。聞いてますよ。聞いてますから。」(笑)---
「えー、で、位置づけで言えば、ちょっと真面目な話になっちゃって申し訳ないんだけれども、
 本当にこの年になって、勉強させてもらっているという実感を持ってます。どういう事かと言うと、こういう事です。
 自分の思っている通りの物語を作っていくっていうのは、実を言うと概ねできるんですよ。
 で、基本的に僕はプロだと思ってます。プロは、自分の嫌いな物でもとか、自分に似合っていない物でも、らしく作ってみせる。
 最低限、あの、他の方が、っていうことはつまり皆さん方です。
 つまり、お客さんが見てくれても面白いなって言えるものを作れなければ、僕はプロだとは言えないと思ってる。
 それで、本当のプロっていうのは、ハリー・ポッターみたいなヒット作を出さなくちゃいけないんです。
 で、僕にはそういうヒット作を作るっていうところまで出来ないっていう自覚が自分の中にあるんで、
 今回みたいな作り方っていうのも、似たような物は作った事もありますけれども、
 やはり15年前に作った物と、今回作った物は違うという。
 それから今回の場合で言いますと、皆さん方よりちょっとだけ年齢上、
 30代前半くらいのスタッフの作ってくれたストーリーを基本的に全部使っています。
 今まででしたら、僕はストーリーを平気で変えてフィルムを作っていく、映像を作っていくっていう事をしてました。
 だけどそれをやめてみたんです。で、やめてみたら、あ、あの、この人の持っている物、この人の持っている物、
 この人の持っている物、みたいな物を自分の中に取り込んで作っていくという事が、
 必ずしも自分の作りたいものではないような気がしていたのが、そうじゃなくって、自分だけで思っている以上に
 いい物が出来るとか、面白い物ができそうだっていうのが分かってきた。
 それを今、勉強させてもらっているんで、位置づけはすごい難しいんですけれども、今、僕にとっては教科書みたいな物です。
 それで、キングゲイナーのような形で作られているという事でいえば、ロボット物だけれどもユーモア物で、
 ユーモア物だけれどもギャグ物で、ギャグ物だけれどもギャグ物じゃない話もありそうだ。
 みたいなのは、実を言うと今までこういうジャンルの物も無かったような気がしています。
 ですから、そういうことも含めて勉強になっているという事です。えー、ですからこんな近い距離でお顔を拝見できるからです。
 あの、自分が好きな事を突き進むのもいいんじゃなくて、それはしなくちゃいけません。
 で、それと同時にもう一つ大事な事は、自分のちょっと脇に見えているもう一つ別の物を取り込んでいくっていうような、
 そういう勉強の仕方とか頑張り方をすると、もっと早く、もっと早く自分の技術なり感性なりを磨いたり、高めたりする事が
 出来るんじゃないのかなっていう事を、僕は今61で勉強させてもらっているんで、
 そういう事を皆さん方に、やっぱり今、やって欲しい。そしたら5年後、10年後に絶対に損はしませんよ。
 自分の思っている事だけでっていうのは、実は高が知れてんじゃないのかなっていう部分はそろそろ気が付いて、
 それこそ、毎日の生活をしていっていただけたらいいなっていう風に思います。
 ごめん、最後の方は本当に年寄り話になっちゃいました。はい、他に。」
---「富野監督が今まで作った中で、一番いい男と女は誰でしょう。」---
「えー、あの、そういう質問もしょっちゅう受けるんですが、あの本当に、本当のことを言いますと、それはありません。
 それで無いっていうのはどういうことかと言うと、作ったものに関しては大体おんなじぐらいの思い入れがあるんで。
 名前を付け忘れたキャラクターでも、劇中の中できちんと出入りをしていったキャラクターっていうのは、
 好き嫌い論に関して言うと、皆、同じように好きですから。
 あの、例えば、セイラさんが好きなんでしょとか、キエルさんが好きなんでしょとか、
 今回で言えばアデットが好きなんでしょとかっていう言い方があるんですが、それはほとんど外交辞令です。
 で、作り手っていうのはかなり、自分の登場させたキャラクターって言うものに対して、近親感を持ってます。
 だからそういう意味での好悪感で言うと、好悪の問題で言えば、敵に限らずですけれども、逆に言えば敵とか、もし、
 僕の場合はあんまり作れなかったんですけれども、悪いキャラクターみたいなのを上手に作れたら、やっぱりそれも好きですよね。
 で、そういう意味での、やっぱり技術者として考えた時にそうなので、一人に徹底、あの、肩入れするっていう事は
 ほとんどありません。で、それをしていくと偏った作品になっていくって言う自覚がすごくありますから、
 それもプロとして気を付けなくちゃいけない事だと思うんで、プロを目指す方はそういう気を付け方をしていただきたい。
 はい、ほかに・・・。男ばっかり。(笑)はい。」
---「気が早いんですけど、ゲイナーの後はどんな作品を」---
 「あ、いや、あの今もちょっと下でそういう話をしていたんですが、これから一年間、具体的には見えません。
 えー、で、企画を立てる場合にプロとして考えなくちゃいけない気を付け方はこういう風にしてます。
 作品が発表されるのはきっと3年後とか、5年後だと。そうすると今、ハリー・ポッターが吹き荒れてます。
 で、ハリーポッターの後に2,3作か、場合によっては6作ぐらいまで作るっていう事は、ハリー・ポッターがあと5,6年は
 生きるわけでしょ。だからそれを避けながら、ハリー・ポッターを潰すような企画を作れないかっていう考えがあると、
 そう簡単に作れない。で、これからハリー・ポッターのような企画がいっぱい出てきて、いっぱい製作されるでしょう。
 それでは勝ちに入れないわけですから、それはやめようねっていう話は、今、下でしたばっかりです。
 ので、ごめんなさい。今は具体的にありません。」(スタッフの人がこれで最後で、と。)
「ん・・・、はい、どうぞ。」
---「どの作品で一番満足の行く仕事が出来ましたか。」---
「すいません。えー・・・、満足した作品なんてあるわけがない。」
---「満足度が一番高いのは。」---
「(首を振りながら)ん、ん、ん、ん、ん・・・、みんな高くない。
 そして、一番高いのは、これも実感なんですけど、いつもなんですけれども、今作り終わったっていうのが一番いいんです。
 それでこれはね、この20年間ずっとそうです。
 そしてあとは何ていうのかな、上手く作れたのか作れなかったのかという反省とか、まあ気に入っているよねっていう位の
 その"まあ"っていうところです。
 それで本当にもし、気に入った作品が出来ちゃったら、実を言うとその後は作れないでしょう。
 で、作れないんじゃなくて、作れないし、作ってはいけないと思います。
 絶対それ以上のものは作れるわけがないんだから。で、そういう意味では申し訳ないと思う部分もあるんですけれども、
 大体忘れることの出来るように、過去の作品っていうのは切り捨てています。
 で、切り捨てていかないと、実を言うとこの年になるまで仕事をやって、つまり現場での仕事をやっていられる
 スタッフになれないと思っていた部分もあります。
 ですから一つだけ、こういう事があります。
 自分自身の作品にとっては、本当に今年の初めに、初めてですけれども、えー、ザブングルっていう作品があって、
 それを映画版にまとめたザブングルグラフティっていう、1時間40分ぐらいの、あの、まあ、ビデオテープがあったんです。
 オンエア、いや、上映して以来、初めて見たんです。びっくりしました。
 これで作画が良かったらこの映画、かなり上等だよねって。感動します。
 で、そういう風に作れていたっていう自分は嬉しいと思う。だからです。
 作っている最中とか、作り終わった瞬間ぐらいまでは、それは好きかも知れないし、満足いっているかもしれないけど、
 やはり本当の満足なんて絶対にあってはいけないんじゃないのかなっていうのがプロの立場だと思ってます。
 それで現にこういう事もあります。僕の周りにもいるんですけれども、気に入った作品って自分の作品の事をいってる奴は、
 碌(ろく)な奴がいないっていう。まあ、これが実感ですので皆さん方は今後生きていくうえでも、
 それは気をつけてくださいねっていうところで、時間が押しているようなんで。」
<この後、握手会に。以下、聞き取れた部分だけを掲載。>
---「キングゲイナーの対象年齢は。」---
「本当は小、中学校の子供に見てもらいたいので、今後なるべくチビちゃん達に見せてやってください。DVDお買い上げ以降は。(笑)」
---「昨日のドミネーター、凄かったです。」---
「あれはアニメーターが凄いの。(笑)本当にそうだもん。ただ、あれやっていいよって判子押したのは自分です。(笑)」
<この日の監督は、終止、黒帽子を取ることなく、疲れはなかったのか、スタッフが用意したお茶も遠慮していました。
 最後は、拍手の中を退場していきました。>

おしまい

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